
俺は、息苦しくなって、吐き気を催し、座っていることすら、しんどくなって、歩道に横になってしまいました。
1月のアスファルトが、とても冷たかったのを覚えています。
定かな記憶ではありませんが、たぶん、俺は、地面に寝そべりながら、とりあえず、当時、勤めていたヘルパー事務所に電話を掛けて、交通事故に遭うて、サービスには入れない旨を、真っ先に伝えたとお思います。
警察への電話は、おばちゃんがしてくれました。
おばちゃんは、事故の状況と、起きた場所を伝えていました。
そして、最後に、電話の向こうの警察官が、「救急車は、必要ですか?」と尋ねました。
おばちゃんは、僕に言いました。
「警察の方が、”救急車は、どうしますか?”って、聞いてますけど・・・・・。」
俺は、答えました。
「呼んでもろてください。」
おばちゃんは、電話口に向かって言いました。
「はい、救急車も、お願いします。」
おばちゃんは、電話を切りました。
俺は、警察官が来るまでの間、ずっと、地面に横たわっていました。
途中、近所にあったコンビニで、事故を起こした車の運転手である若い男性が、500mlのペットボトルのお茶を持って来てくれました。たぶん、この2人は、親子なんやと思いました。
「どっちがいいですか?」
と、2つ出されたうちの、十六茶を選んだ事を鮮明に覚えています。当時の俺は、”あまり美味しくない”との理由で、十六茶は、あんまり好きやなかったんですけど、なぜか、十六茶を選びました。
もう一方のペットボトルが何やったんかは、覚えていません。ひょっとしたら、俺が選んだんやなくて、ただ、十六茶を渡されただけかも知れません。ここら辺の記憶は、曖昧です。
17年後の今になって、ふと、思いましたが、この時、男性が手渡してくれたのは、冷たいお茶でした。1月の冷たい地面に横たわっていましたので、たぶん俺は、ホットの方が嬉しかったと思いますが・・・・・。
当時は、まだ、ホットのペットボトルは、売られてなかったんかな?
まぁ、せやけど、その時の俺は、お茶の温度なんか、気にできるような状態じゃなかったのは、確かです。そんな、心の余裕は、ありませんでした。
地面に横たわりながら、何口か飲んだ、あの独特の味は、今でも忘れられません。とても冷たくて、飲むと、頭が、シャキッとしたのを覚えています。
たぶん、10分後ぐらいには、警察官が到着したと思います。
せやけど、警察官が、こんな風な事を言うてたのを覚えています。
「え?救急車、必要やったんですか?それは、聞いてませんでした・・・・・。」
俺は、地面に横たわりながら、思わず、突っ込みを入れてしまいました。
「おいっっっ!!!!!!!!(怒)風邪引くわ、、、、、いや、出血多量で死ぬわ!」
俺は、胸の上で、手袋をはめたままの右腕を曲げて、その腕を左手で支えるようにしながら、地面に横たわっていました。
その時は、痛みの感覚が戻って来ていて、自分の怪我した場所が、右手の小指である事が分かっていました。
せやけど、俺は、手袋を外して、自分の目で、それを確認する事ができませんでした。
今まで感じた事のない痛みの感覚と、手袋の上から、軽く触ってみた感触からして、恐らく、小指がグチャグチャになっているであろう事を感じていました。
俺は、怖くて、手袋を外してみる事ができませんでした。
~続く~

