2005.12.09「攻撃は最大の防御なり!」

おまち堂のコラム

12月4日に、日本拳法の今年最後の昇段試合がありました。

僕は、あと3人に勝利すれば3段になれるんですけど、残念ながら今回も負けてしまい、昇段は、来年以降に持ち越しになってしまいました。”今回も”と言うのは、昇段試合は年に4回あるんですけど、今年の僕は、その全ての試合で勝利を逃してしもたからです。戦績は、2敗2分けでした。一回も勝てませんでした・・・・・。

僕は、今年の1月から、約4年振りに拳法復帰を果たしたんですけど、長いブランクから復帰して、すんなりと昇段させてもらえる程、日本拳法の世界は生易しいものではありませんでした。あわよくば、あと3勝やったんで、今年中にも昇段できるんやないかと、復帰した当初は、密かに期待しとったんですけど、全くあきませんでした。たったの1勝すらも上積みする事ができませんでした。

長いブランクの間に、試合勘が鈍っとった事、2回目と3回目の昇段試合の時には肋骨を痛めとった事、ブランクの間に病気をして、体重が昔よりも10kgも軽くなってしもた事、などなど、その原因を上げたらキリがないんですけど、僕は、一番の原因は精神面にあると思てます。

最近の僕は、昔のような闘争心が沸かんようになってきています。早い話が、最近の僕は、以前と比べると精神的に大人になってしもたんやと思います。

昔の僕は、相手にええパンチをもろたりしたら、試合の勝ち負けは、そっちのけで、「どつき返したんねん!」と言わんばかりに、パンチを振るいながら相手に向こて行ってました。

せやけど、最近の僕には、それがありません。稽古の時でも、相手に強烈なパンチを当ててしもて、相手が痛そうにしてたら、「申し訳ない・・・・・。」ちゅう気持ちが先立ってしまいます。とことんにまで、相手を追い掛け回して、パンチの雨を降らせるるような事は、なくなってしまいました。

昔の僕は、毎回、先生に、「構えに力が入り過ぎや!もっと肩の力を抜けっ!」と言われていながらも、全くその癖が治らずに、自分でも「どないしたら、肩の力が抜けるんやろう・・・・・。」と不思議に思っとった程でした。意識して、力を入れてないつもりでも、先生の目には、いつもガチンガチンに映っていたようです。

せやけど、何がどないなったんか、昔は、あんだけ注意されても治らんかった悪い癖が、最近の僕からは、すっかり影を潜めて、構えからは、力みがなくなっています。もはや、「力を抜けっ!」と先生に言われる事は、なくなりました。

これは、成長と言えば成長に違いないんですけど、そないなってから、全く勝たれへんようになってしもたんは、皮肉な結果です。僕は、力みと一緒に、格闘技や武道に必要な闘争心や「勝ちたい!」ちゅう気持ちまでをも失くしてしもたみたいです。

昔は、試合中に足を痛めてしもても、その事には全く気が付かんで、平気で、痛めた足で蹴りを何発も繰り出してました。ほんでもって、試合が終わってから、足が内出血して、パンパンに腫れ上がってる事に気付いて、普通に歩かれへんかったりとかが、当たり前のようにありました。

たった2分間の試合を1回しただけで、次の日、体中が筋肉痛で、車に乗ってバックする時に、首が痛くて、後ろを振り返られへんかったりするんは当たり前でした。試合は、たったの2分間でも、試合前の緊張とかの気疲れがあって、試合が終わったその日は、いつも、一日中ぐったりとしていたもんでした。

せやけど、復帰後の僕には、そのいずれもがなくなっています。もはや試合前に緊張する事もなくなりました。これは、試合慣れした事もありますし、バンドのボーカルで人前で歌ったり話したりする事に慣れたせいもあると思います。

これも、成長と言えば成長なんかも知れませんけど、やはり、スポーツなどでは、多少の緊張感は必要なようで、リラックスし過ぎて、さらに闘争心もあれへんかったら、試合には勝てません。スポーツ心理学的には、人が一番力を出せるのは、緊張50%、リラックス50%の状態やそうです。復帰後の僕は、試合後に全身が筋肉痛になった事もないし、試合が終わってから、一日中、ぐったりする事もなくなりました。

筋肉痛がなくなったのは、体が軽くなったせいもあるかも知れません。筋力は、もう、昔程度には戻ってると思いますんで、それで体重が10kgも落ちたんやから、筋肉にかかる負担は、かなり軽くなったはずです。

以前の僕は、体力の消耗が激しいからと、相手が組みに来ても、なかなかそれには応じんかったんですけど、最近の僕は、相手が組みに来たら自分も受けて立って、相手を投げにいったりしています。

そんな試合をしても、最近の僕は、翌日に筋肉痛にもなりませんし、昔のように、1試合で息が上がって、ゼィゼィハァハァと苦しむ事もなくなりました。ほんまから言うたら、体重が落ちた今は、体力勝負をするよりも、スピードで勝負をするべきなんですけど、体力があった昔よりも、痩せた今の方が、積極的に組み合いをしてるっちゅうのもおかしな話です。

僕は、別に、打たれてもどうって事のない稽古の時は、それなりに強いんですけど、2本先取制の試合になると、どうしても慎重になり過ぎてしまう嫌いがあります。

せやから、もし、昔の僕と今の僕が、稽古場で対戦したとしたら、僕は勝つ自信があります。昔の僕は右足の親指を痛めていて、右足の蹴りは、ほとんど出しませんでした。指が治ってからも、再度、痛めてしまう恐怖心から、いつまでも蹴りが出せませんでした。それに、昔の僕は、いつもガチガチに力んどったし、組み合いを挑んでくる相手が好きではありませんでした。

今の僕は、右足の蹴りも普通に出せるようになったし、力も抜けて、スピードは以前よりも増しているはずです。それに、今は組み合いも嫌いではありません。攻撃のバランスの取れてる今の僕やったら、昔の僕に、稽古場では勝てると思います。

せやけど、実際の試合では、やっぱり勝たれへんと思います。2試合目の事を考えずに、あんだけガムシャラにパンチを振り回してかかって来られたら、10kgの体重差に圧倒されて、負けてしまうと思います。

そない考えたら、やっぱり試合で勝つためには、50%の冷静さを保ちながらも、ガムシャラに、とにかく、前へ前へと攻めんとあかんみたいです。今の僕は、相手を見過ぎてしもて、警戒心が旺盛過ぎて、それが、思い切って攻められへん原因になっています。人が試合をしてる時は、「攻めろ、攻めろ!先に攻めろ!」と、しつこいぐらいに言う僕なんですけど、いざ自分の事となると、情けない程に攻めがありません。

病気をしたり、三十路を回って、精神的には大人になって、多少は成長したと思うんですけど、こと拳法に限って言えば、その事が、逆にマイナスに作用してると言わざるを得んのかも知れません。怖い物知らずの子供が、世間の荒波に揉まれるに従うて、大人になってしもて、知らず知らずのうちに攻めの気持ちを失うて、守りに入ってしもてるような状態が、今の僕やと言えるかも知れません。

”攻撃は最大の防御なり”

もう一度、攻めの気持ちを思い出して、来年こそは、3段に昇段したいです。

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