2006.03.20「究極のいちゃもん」その1

おまち堂のコラム

先週の金曜日の話です。

毎週金曜日は、大阪府枚方市の拳法道場に通う日なんですけど、その日の僕は、家を出発する直前まで、行こうか行くまいか悩んでいました。というのも、2日前の水曜日の豊中市の道場の稽古で右腕を何度も蹴られて、こっぴどく痛めていた事と、枚方の道場では子供の試合練習の審判を30分もやらんとあかんかった事と、ひょっとしたら、わざわざに行っても、大人の稽古生が来てない可能性があった事、前日に洗濯して、部屋干ししていた胴着が完全に乾いていなかった事などが、その理由でした。

せやけど、僕は、とてつもなく低いテンションを何とか上昇させて、「これも世のため人のためや。逃げたらあかん。」と、15分程うだうだと悩んだ挙句に車に乗り込み、道場に向かいました。小腹が空いてたんで、家から5分程走ったところにあるコンビニで、パンでも買おうと思ったんですけど、右折して入らんとあかんその店は、その時間帯は交通量が多くて、入るのも出るのも時間が掛りそうやったんで通り過ぎる事にしました。今となって考えてみると、それが、その日の僕の第一の失敗でした。

その後の僕は、「今日は、いつもは通過する、ガソリンスタンドと一体になってるコンビニに寄って、初めて、あそこのパンを食べてみよう。」と思いながら車を走らせていました。

そこのコンビニは、店内でパンを焼いてる店で、普通のコンビニのパンには、最近ちょっと飽き気味やった僕には魅力的に感じられました。この日は、出発前に、うだうだとしていた分、いつもよりも時間に遅れ気味で、大幅に遅刻してしまう事が決定的やったんで、僕はこの日は、拳法よりも違う事に楽しみを見つけようとしていました。いつもとは少し違うパンを食べて、気分転換でもしようと思っていました。

そこのコンビニに向かう途中の道は、いつもの事ながら、結構、混んでいました。

無意識のうちにイライラとしていた僕は、何気なく右耳の後ろに手をやりました。すると、そこには吹き出物ができているみたいでした。きっとストレスのせいやと思うんですけど、僕は、それを思わずいじくって、潰してしまいました。耳から離した右手の人差し指に目をやると、そこには、血が付いていました。僕のテンションは、瞬く間に急降下してしまいました。

一瞬、「やっぱり、今日は行くんやめて帰ろうかな・・・・・。」ちゅう思いが脳裏をかすめました。そこからやったら、10分もあれば、家に帰り着く事ができました。せやけど僕は漠然と、初めて食べるパンの魅力に負けてしもとったみたいで、出発前の気持ちと同様に、また、うだうだと優柔不断に、そのまま車を走らせてしまいました。それが、その日の第二の失敗でした。

そして、僕は、その約10分後に、例のコンビニに到着しました。ガソリンスタンドに入ると、一斉に店員さんが、僕の車の誘導を始めようとしたんですけど、僕は窓を開けて、前方を指差しながら、「すんません!コンビニ行かせてもらいます!」と声を上げて、彼らの間を通過して、コンビニ用の駐車上に車を止めて、店内に入りました。

コンビニ店内に入った僕は、レジの横のパンのショウケースを尻目に、とりあえずは、普通の袋入りのパンは、どんなんがあるんやろかと、パン売り場を探して、店内を見回してみました。せやけど、そこの店では、袋入りのパンは売られてへんかったみたいでした。

僕は、ショウケースの前に立って、どんなパンがあるんかと眺めてみました。せやけど、そこには、楽しみにしとった程の美味しそうなパンは並べられていませんでした。内心、僕は、ちょっとがっかりしていました。

せやけど、ここまで来てしもたら、買わずに帰る訳にも行かんかったんで、仕方なしに僕は、それ程好きでもないメロンパンと、チョコレートクリームが詰められた渦巻き貝みたいなパンを買いました。いつも拳法前には1個しかパンは食べへんのですけど、この日は、滅多に来ぇへん店に来たんで、ついつい、二つ買うてしまいました。頑張って休まずに道場に行く、自分に対するご褒美の意味合いもあったんやと思います。

せやけど、別に、これは第三の失敗ではありませんでした。ただ、パンを二つも買うたっちゅう事は、その日の僕の心が、いかに拳法から離れとったっちゅう事の証明ではありました。真剣に体を動かすつもりやったら、稽古前に、二つもパンを食べて、お腹を膨れさせるようなことは、せんはずです。

レジで会計を済ませた僕は、それ程、行きたかった訳でもなかったのに、トイレに行かせてもらう事にしました。たいがい、いつも道場に着くまでの途中で、行きたくなるんで、とりあえず、行っといて、ちょっとでも、その時間をずらそうと思いました。今となって考えてみると、これが、この日の第三の失敗でした。家を出る前に行ったばっかりやったのに、無理をして行く必要なんか、全くありませんでした。時間にしたら、前回にトイレに行ったんは、たったの15分程前の事でした。

トイレに向かう途中に、2歳ぐらいの男の子供がウロチョロとしてたんで、僕は、それを避けた後に、トイレの方向である右に向きを変えました。

と、その時です!さっきの追い越したはずの子供が、どういう訳か、僕の右足にぶつかってきました。もちろん、ぶつかって来たっちゅうても、子供の事ですし、僕も普通に歩いてるスピードでしたんで、お互いに、怪我をするような衝突ではありませんでした。僕は、男の子に、「あっ、ゴメンな!」と謝りました。

衝突現場の、そのすぐ横のテーブルに、男の子の母親が座っていました。僕の声を聞いて、彼女が顔を上げて、子供の方に目をやったんで、僕は、「あっ、すんません。ちょっとぶつかってしもたです。ごめんなさいね。」と謝りました。

母親は茶髪で、目の上下に銀色のアイシャドウを派手に塗りたくってる若い女性でした。見るからに頭は悪そうやったんですけど、僕が謝ると、笑顔で会釈をしてくれました。子供は、僕とぶつかった後に母親の元に戻ろうとして、彼女の座るイスに顔をぶつけたみたいで、泣き始めたんですけど、ぶつかった後の事は僕の知ったこっちゃないんで、僕は、そのままトイレに行きました。

僕がトイレに入ると、手洗い場の鏡の前に、髪の毛を明るい茶色に染めた一人の男性がいて、僕の方を振り返りました。目が合った僕は、思わず、その男性に笑顔で会釈をしてしまいました。

あえて、この日の失敗を探すんやとしたら、これは第四の失敗やったんかも知れません。

僕は、ちょうどその男性と入れ違いになる形で、用を足してからトイレを出ました。

 

~続く~

タイトルとURLをコピーしました