2006.03.29「究極のいちゃもん」その6

おまち堂のコラム

せやけど、僕は、どうしても納得が行かんかったんで。

「やっぱり、裁判しましょうか。もし裁判で負けたら、その時は、きっちり慰謝料でも治療費でも払わせてもらいますわ。」と、男に言いました。

「だから、言うてるでしょ。被害者は、こっちなんですよ!加害者に、裁判なんか起こせませんて!」男が、幾分、声を荒げて言いました。

「どうも、納得が行かんのですよ。ぶつかって来たんは、お子さんの方ですよ。僕の方が、100%悪いっちゅうのは、どうも、納得が行きませんわ。交通事故の場合かて、そうやないですか。”何対何で、どっちが悪い”とか、過失の割合ちゅうのがあるでしょ。僕だけが、一方的に悪いっちゅう事は、ないと思いますよ。あなた達にも、子供を店内で放置して、走り回らせてはった責任ちゅうもんがあるでしょう。」僕は言いました。

「あぁ、そうですか。別に、裁判がしたいんやったら、してくれていいですよ。その代わり、裁判は、あなたが起してくださいよ!加害者に、裁判なんか起せませんから!」男が言いました。

「分かりました。そないさせてもらいますわ。せやけど、しばらく、時間もろていいですか。僕も、いろいろと勉強せんとあきませんからね。今、ここで即答するんは無理ですわ。また後日、連絡させてもらいますわ。」僕は言いました。

「勉強!?勉強ですか?勉強って、何の勉強ですか?」男は、僕の揚げ足を取ろうと、喰らいつくように言いました。

「裁判の起し方とか、掛る費用とか、いろいろと勉強せんとあかんでしょ。今まで、こんな経験ありませんからね。それに、さっきの警察官が言うてはったように、法律相談の窓口とか、あるみたいですから、いっぺん行ってみて、話を聞いてみて、それから考えて、答え出さしてもらいますわ。」僕は言いました。

男は「そうですか。僕は、別に構いませんよ。」と、強気な姿勢を崩さずに、吐き捨てるように言いました。

「もし裁判するんやとしたら、ちゃんと、僕も医者に診てもろとかなあきませんしね。」僕は言いました。

「何をですか?」男が、すかさず尋ねました。

「僕かて、ぶつかられてるんですから、後から後遺症が出んとも限らんでしょう。」僕は言いました。

「あなた、何を言ってるんですか?2歳の子供にぶつかられて、後遺症なんか出るはずがないでしょう!?今、どっか痛いんですか?」イラついた口調で、男が言いました。

「いや、今は、別に痛くはないですけど、後遺症は、後から来ますからね。それ考えたら、怖いですわ・・・・・。」僕は、真顔で面白い事を言うてやりました。相手に対する強烈な当てつけのつもりでした。

相手が、僕から不当に金を巻き上げようとするんやったら、僕も同じ事をせんと、一方的に、やられっぱなしです。それで、「今回は、痛み分けにしよう。」と、男に、それとなく分からせるつもりで、僕は、そない言いました。

せやけど、僕のこの一言を聞いて、男の感情は、逆にヒートアップしました。

「あなた、何を言うてるんですか?頭おかしいんですか?どこの世界に、2歳の子供にぶつかられて、後遺症の出る大人がいてるんですか?それじゃ、仮にですよ。あなたの足に、後遺症が出るほど強く子供がぶつかったんやとしたら、子供の頭の方が、もっとひどいダメージを受けてるはずでしょう!?あなた、何を言うてるんですか!」男がムキになって言いました。

「いや、それは分かりませんよ。こればっかりは、医者に診てもらわん事にはね・・・・・。後遺症は、どちらか一方にだけ出るとは限りませんからね。それは、僕らが決める事やなくて、医者が決める事ですわ。」僕は言いました。

僕達は、病院の外の玄関先で話をしていたんですけど、それを聞いた男は、「それじゃ、今、医者に診てもろとってください!後になって、ギャーギャー言われてもかないませんからね!」と、声を荒げて言いながら、先導して、僕を病院内に招き入れました。

「さぁ、今ここで、診察してもろとってください!足、痛いんでしょ?後遺症が出るかも知らんのでしょ?それやったら、今ここで診察しといてください!」男は、受付と守衛室の前で、恥ずかし気もなく、大声でわめき散らしました。

「いや、僕は、そんなアホな事は、せんですけどね。そういう事かて、あり得るっちゅう話をしてるんですよ。」僕は、男が今やってる事が、まさに、それと全く同じ事なんやと、それらしく分からそうとしたんですけど、頭の悪い人間には、遠回し過ぎて、分からんかったみたいでした。

「何ですか、それ!?痛くもないのに、後遺症が出るかも知らんから、医者に診てもらうやなんて、そんなん、いちゃもんですやん!そんなん、ヤクザ屋さんのする事ですやん!あなた、ヤクザ屋さんですか?警察呼びますよ!いちゃもんつけられてるって!」あたかも、自分が被害者であるかのように、周囲の人達に印象付けようと、男は携帯電話を取り出しながら、大声で、わめき散らし続けました。自分がやってる事を棚に上げて、ようも、そないな事が、噴出さずに真顔で言えたもんです。

「さぁ、早く診察してきてくださいよ!それか、一筆書いてください。”後遺症が出ても、文句は言いません”て!それか、今ここで、診てもろて、診断書とっといてください!後から、”どこが痛い、ここが痛い”言われても困りますから!さぁ、早く!どっちかにしてください!」男は、興奮しながら、わめき続けました。

「病院内で、こないに騒ぎ立てたら迷惑ですやん。外に出ましょうよ。」僕は、冷静に言いました。

「今、救急車、来てるやん!」男は、玄関のガラス扉を通して、外を指差しながら言いました。

玄関を背にしていた僕が、後ろを振り返ると、赤色灯を回した救急車が、玄関前に止まっていました。どうやら急患が運ばれて来た様子でした。

お医者さん始め、夜間の救急病院で働く人達は、本来やったら、こういった、一刻一秒を争う患者さん方のために待機してるはずやのに、今回の相手夫婦みたいな、くだらん人間の企てのために利用されるやなんて、全くの心外に違いありません。

こういった行為は、真剣に働いてはる人達に対して、失礼千万やと思います。

 

~続く~

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