2006.04.12「究極のいちゃもん」その9

おまち堂のコラム

翌日の土曜日と日曜日は、仕事が入っていて、とても忙しかったです。

普段の僕は、日曜日は、めったには仕事はせんのですけど、その日は仕事をしていました。

雨が降っていたため、土曜日一日では仕事が終わらずに、翌日の日曜日も、同じ家で仕事をさせていただく段取りになっていました。

僕が、お客さんの家に到着してトラックを降りようとした、ちょうどその時、僕の目の前の交差点で、乗用車と自転車に乗った60代ぐらいの中年男性が衝突する事故があり、たまたま、僕は、それを目撃しました。

それほど、車のスピードは出てなかったんですけど、自転車に乗っていた中年男性は、衝突の勢いで、もんどり打って地面に倒れ、後頭部を打ってはりました。

彼は、しばらくは地面に倒れていたんですけど、そのうちに立ち上がり、車から降りてきていた中年男性に対して、右手を上げて、地面に落ちていた白い帽子を拾い上げて、被り直し、再び自転車に乗って、走り去って行きました。

自転車は、少し車に踏みつけられてたんですけど、それでも、何とか普通に走ってるみたいでした。

僕は、それを見て、万が一の時のためと、乗用車のナンバーを、手帳に控えておきました。

と、それと同時に、「車とぶつかって、地面に倒れて、頭打ってんのに、それでも、何も言わんと去って行く心の広い人もいてるっちゅうのに、今回の俺の一件みたいに、明らかに、何事もあれへんのに、それをアホみたいに騒ぎ立てて、絡んでくる輩もおるんやからな・・・・・。ほんまに、俺はツイてへんわ・・・・・。車とぶつかって絡んでくるんやったら、まぁ分からんでもないけど、普通に歩いてる人間とぶつかって、絡んでくるんやから、ほんまタチ悪いわ・・・・・。」と思たもんです。

しかも、ぶつかって来たのは、絡んで来ている当人ではなくて、彼が付き合っている女性の、右も左も分からんような、2~3歳ぐらいの子供です。

彼は、親権者でも何でもない上に、さらに、その子供が、僕にぶつかった現場には、居合わせてなかったんです。その時、彼は、トイレにいたんですから・・・・・・。要するに、彼は、子供が、僕にぶつかって来た状況に関して、何も知らんのです。

彼は、その子の母親の女性から聞いた話を元に、僕を恐喝をしていた訳なんですけど、さらに言えば、彼女も、携帯電話の画面を見ていた為、我が子が僕にぶつかった瞬間というのは、見ていないんです。

そんな、理不尽な恐喝って、ありますか?(笑)

そんなイチャモンが通る世の中やとしたら、恐ろしくて、生きていけません。オチオチ、外出もできませんよね。

土曜日も日曜日も、忙しい仕事の、フトした合間に、例の一件が頭をよぎる事があったんですけど、その度に僕は、「こんだけ、一生懸命に仕事して稼ぐ貴重なお金を、あんなアホにくれてやる訳にはいかんわ。そんな無駄な金があるんやったら、その分、高く買い取りしてあげて、お客さんを喜ばせてあげた方が、ええに決まってるわ。お客さんからいただくお金を、あんなアホに流してしもたら、それこそ、お客さんに対して失礼やわ。」と、自分に言い聞かせていました。

そして、週の明けた月曜日に、僕は豊中警察署を訪れて、「暴力相談窓口」の扉を叩きました。

僕は、間違いなく常習犯の彼らに、今まで泣かされてきた人達のためにも、そして今後、同じように泣かされる被害者をこしらえへんためにも、何とかして、彼らをこらしめる方法はあれへんかと考えていました。

実際には、100%通院なんかせぇへんのに、「10日間通院するとして、1日1万円かかるとして、10万円。その半額の5万円を払え。」とか、「健康保険に加入してへんから、通院すると治療費が高くつく。」とかいう言葉が、詐欺罪や脅迫罪、恐喝罪の未遂事件にあたりはせんかと考えていました。もし、彼らの行為が、それらの罪に該当するんやったら、僕は、迷わず被害届を出すつもりでした。

せやけど、残念ながら、相談窓口のおっちゃんの話では、今の段階では、それは無理との事でした。

せやけど、窓口のおっちゃんの話では、当たり前の事やけど、僕には、刑事責任は、一切、ないとの事でした。

わざと、子供を蹴飛ばしたりした場合は、”傷害罪”が適用されるんですけど、僕の場合は、わざとやありませんし、そもそもにおいて、ぶつかって来たのは子供の方なんで、僕には、一切、罪はないとの事でした。

わざとやなくても、過失で相手に怪我をさせてしもた場合には、”過失傷害罪”という罪が適用される場合もあるらしいんですけど、今回の僕のケースは、それにも該当はしないやろう、との事でした。

「今回の君みたいなケースで、いちいち罪を適用してたら、世の中は、犯罪者だらけになるがな。」

窓口のおっちゃんは、言いました。確かにその通りです。

「せやけど、刑事責任はなくても、民事上の責任がないとは限れへんよ。」窓口のおっちゃんは、続けました。

「相手に怪我をさせたんやったら、民事責任は出てくるわな。せやけど、このケースでは、たとえ裁判したとしても、君は負けへんと思うよ。相手には、”裁判起こしてもろて、そこで決まった金額やったら払わしてもらいます。”って、言うたったらええんとちゃうか?」

「あぁ、そうなんですか。という事は、相手に”払え!”と言われても、僕は払う必要はないという事ですね?」

そう僕が尋ねると、

「払う必要がないとは、私の口からは言われへんけど、恐らく裁判になっても、君は負けへんやろうね。」

窓口のおっちゃんは、言葉を濁しました。

「相手には、”今日、警察に行ってきて、そない言われました。裁判起こしてください。”って、言うたったらええねん。」

窓口のおっちゃんは、心強い言葉を掛けてくれはりました。

僕は、これが、金曜日に、現場に顔を出しに来た警察官と同じ職業の人間なんかと感心していました。もし、この窓口のおっちゃんが、金曜日に現場に来てくれてはったら、たぶん、その場で、このくだらん一件は、終幕を迎えていたはずでした。

そして、おっちゃんは言葉を続けました。

「それで、君にして欲しい事はな・・・・・相手に電話する時に、会話を録音しておいて欲しいねん。君が、相手にそない言うた時に、相手が、”外歩けんようにしたろか?”とか、”何やと、こらっ!なめた事ぬかしとったら、おまえの家族がどないなっても知らんぞ!”とか、そういう事を言うた場合は、今度は、相手に脅迫罪の疑いが出てくるから、その時は、その録音テープを持って、もう1回、ここへ来て欲しいねん。それで、そのテープを聞いて、相手を罪に問えるかどうか、その時に判断するから。」

僕は丁寧に窓口のおっちゃんに頭を下げて、お礼を述べて、帰路に着きました。

僕は、帰りの車の中で考えていました。

「もう、電話機の説明書は、なくしてしもたがな・・・・・。会話の録音のやり方、分からんがな・・・・・。どないしよ・・・・・。」

いつまでたっても、僕の悩みは尽きません。。。。。

 

~続く~

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