2005.12.20「精神年齢の低い高校生」

おまち堂のコラム

前回のコラムに登場した塾講師の事を、僕は、「頭のええ大学に通って、勉強ができて成績もええのに、精神年齢が小学生並み」と書きました。それに関連して思い出した出来事なんですけど、3年程前に、こんな出来事がありました。

僕の家の1階は、親父の経営する道具屋の店舗になってるんですけど、当時、その店で働いていた僕は、子供が柱に突っ伏して泣いているように見える、よくできた人形をさりげなく店先に置いて、お客さんや通行人の反応を楽しんでいました。

その人形には顔がなかったんですけど、僕は、ちょうどその時に、リアルな出来のガイコツの頭を持っていて、それが、その人形の顔の大きさにピッタリやったんで、それを上手い事人形に取り付けて、見事な子供ガイコツをこしらえました。

お客さんが、ほんまの子供やと思って顔を覗き込むと、実は、ガイコツやったという、ちょっときつい冗談なんですけど、当時の僕は、そんな事をして楽しんでいました。(当時、真剣にビックリしはった方、すんませんでした・・・・・。)

僕の家の近所には、そこいらの学区では2番目に学力レベルの高い公立高校があって、多くの生徒が登下校の際にうちの店の前を通ります。そして事件は、そこの高校に通う一人の背の高い高校生によって引き起こされました。

彼は、友人ら3人と、うちの店の前に自転車を止めて、しばらく、その人形を手に取ってワイワイガヤガヤと騒いでたんですけど、何を思ったんか、突然に、その人形を蹴り上げました。そして、落下した衝撃で、僕が、せっかく取り付けたガイコツの頭にはヒビが入って、アゴが外れてしまいました。

人形の頭蓋骨が地面に叩きつけられた時の大きな音を聞いて、僕の親父が駆けつけて、3人の高校生を捕まえました。

親父が、すごい剣幕で、「こらっ!人の店に来て、物を蹴り飛ばすとはどういう事や!おまえら、どこの高校や!」と怒鳴りつけました。違うところで作業をしていた僕も、その音を聞いて、すかさずに駆けつけました。

すると、その背の高い高校生は、「△△高校です。」と、自分の通う高校とは違う名前を告げました。

「学年とクラスは?担任は、何ちゅう名前や?」

親父は、問い詰めました。高校生は、黙っていました。

その時、僕は、3人の自転車に貼られている通学許可のシールを見て、彼らが嘘を付いてる事に気付きました。

「おまえら、△△高校とちゃうやろ?自転車のシールは、○○高校になってるやないか。」

僕は言いました。

それでも高校生は黙っていました。

「言いたくなかったら言わんでもええけど、言うまで帰さんぞ。他の2人は、関係ないんやったらウロチョロしとらんと帰れ!」親父が言いました。

しばらく沈黙を続けていた高校生も、とうとう観念したと見えて、「本当は、○○高校です。2年1組で、担任は、□□先生です。」と、全てを白状しました。

早速、僕は、高校に電話を掛けて、生徒が店先の展示物を蹴飛ばして壊してしまった事を伝えて、教育指導の先生に来てくれるようにお願いしました。

しばらくして、教育指導の先生がやって来て、「よく言って聞かせておきます。後程、保護者と連絡を取って、謝罪に来させます。申し訳ございませんでした。」と述べて、2人で頭を下げて帰って行きました。

そして、夜になってから、仕事が終わったという母親と高校生と教頭先生が、3人でうちに謝罪にやってきました。

この時、僕が感じたのは、「子供が子供やったら、親も親や。」ちゅう事でした。

早い話が、親も非常識な人でした。僕らに対する彼女のその謝り方には、「たかが、子供の軽い、いたずら程度で、そないに目くじらを立てる事もないやないですか!」ちゅう態度がありありでした。

彼女は、僕に「壊れた人形が、どんな状態か見せてください。」としきりに言って来ました。

僕は、「人形の壊れ具合が、どの程度かとか、そんな問題やないんですよ。人が一生懸命にこしらえた人形を蹴り飛ばされたっちゅう気分の問題ですわ。いきなり人の店に来て、中に置いてある展示物を蹴り飛ばすやなんて、まともな人間のする事やないでしょう。おまけに、最初は、嘘の高校名を言うし、ちょっと、タチが悪過ぎる事ないですか?一体全体、家でどういう教育してはるんですか?」と、言うてやりました。

きっと、彼女は、子供から、人形の損傷は、それ程大した事はないと聞いとったんやと思います。せやから、僕に人形を持って来させて、「この程度の事で何を言うてはりますの?」とやり込めるつもりやったんやと思います。

彼女は、逆切れした口調で言いました。きっと、僕みたいな若造に、「どういう教育をしてはるんですか?」と言われて、カチンと来てはったんやと思います。

「この子のした事は、確かに、許されない事です。その事に関しては謝罪の言葉もありません。うちは父親がいてませんので、この子の教育には、人一倍気を使ってきたつもりです。帰ったら、よく言って聞かせておきます。私も、物をこしらえる仕事に従事してるんです。一生懸命に、こしらえた物を壊される気持ちは、痛い程分かります。だから、その人形を、一目だけでもいいから見てみたいんです。」彼女の言葉には、誠意のカケラも感じられませんでした。

そこまで言いはるんやったらと、結局、僕は彼女に人形を見せてあげたんですけど、だからと言うて、その後、何がどないなった訳でもありませんでした。結局、彼女は、終始、形式だけで頭を下げ続けて帰って行きました。

僕としたら、せっかく、こしらえた人形を蹴り飛ばして壊された上に、母親の横柄な態度に、気分を害されただけの、全くのやられ損でした。ほんまに、悪い事をしたと思うんやったら、その人形を買い取るとかの話も出てきそうなもんですけど、そんな話はカケラもありませんでした。

もちろん、彼女は菓子折りの一つも持って来てくれませんでした。別に、僕はお菓子が食べたい訳やないんですけど、人の家に、物を壊したお詫びに来るのに、手ブラっちゅう神経が理解できません。こっちは、一方的なやられ損、向こうはやり得でした。何の腹も痛めていません。

彼女達が帰った後、僕と親父は、「あの謝り方は、よっぽど慣れてるな。あの高校生は、あちこちで悪さをしでかして、彼女は謝罪に引っ張り回されてるんとちゃうか?」という意見で一致しました。

知り合いのおばちゃんが、その○○高校の医務室で仕事をしてはるんで、後に情報が入ってきたんですけど、やはり彼は、かなりの悪ガキで、あちこちでトラブルを起こしてるとの事でした。うちの店の件では、数日間の停学になったそうです。

彼も、ものすごく頭のええ人間です。アホでは、○○高校には入れません。せやけど、精神年齢という点においては、例の塾講師と同様に、小学生の低学年並みです。人の店に来て、物を蹴飛ばすやなんて、高校生のする事やないです。そんな事をしたらあかん事ぐらいは、小学生低学年の子でも知ってそうなもんです。

よっぽど、親の教育が悪かったんやと思います。ただでさえ、親の資格のないような人間が、働きに出て家におらんかったとしたら、そら、子供も、あないになってしまうと思います。しかも、彼には、父親がいないとの事です。そないになったら、一体全体、誰が、彼に教育をするんでしょうか?

これからの世の中は、ただ勉強ができるだけの、体の大きな、小学生並みの精神をした子供達で溢れていくのでしょうか・・・・・。

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